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放映直前特別企画インタビュー 金子 彰史に聞く!!

放映直前特別企画インタビュー 金子 彰史に聞く!!

――それでは早速、お話をうかがいたいと思います。月並みですが「GX」の終了から、どのようにプロジェクトが始動したのでしょうか。

金子 プロジェクトの始動とは少し違うかもしれませんが、
「GX」構想段階で上松さんから最終話に続編へのヒキを盛り込んでほしいとオーダーがありました。
正確にはもっと以前、「G」の頃から上松さんにはそう言われていたのですが、自分が頑なに拒否してきたという経緯があります。

――続きを作りたい原作と、作りたくない原作ということでしょうか?

金子 そうではありません。
ただ自分は、物語は続けるよりも終わらせるのに執着していますので、物語の最後にヒキは作りたくありません。
何より、続編製作が決まっていないのにそんな事をするのは無責任がすぎると個人的には忌避しているくらいです。

ですが、そんな主張を躊躇わせるほどにシンフォギア現場は楽しく、 実際、自分自身がもう少し続きを書いてみたいと思えたので、 おっかなびっくりではありますが「GX」13話のラスト付近、 具体的には、翼とマリアを見送る弦十郎と八紘が交わす会話にそれらしい事を盛り込んでみました。

今思うと全然たいした事ないのですが、
もしかするとそこが「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」(以下、AXZ)の出発点なのかもしれません。
幸いな事に、その後の声援のおかげで4期どころか5期までのプロジェクトが始動する事となり、肩透かしにならずにすみました。
そう考えると、シンフォギアのみならず全ての続編作品というのは、ファンの皆さんのパワーの産物でもありますので、 この場を借りて、シンフォギアシリーズの続きを作れた事のお礼を言いたいです。ありがとうございました。

――シリーズ第4期となる「AXZ」ですが、どのようにはじまるのでしょうか。

金子 「AXZ」の物語は、魔法少女事変の収束直後、約一か月程度経過したところに位置しています。

実は、第3期と第4期のあいだに、
3.5期となるエピソード「アレキサンドリア号事件」があるのですが……。
こちらはスマホアプリとして配信を予定している「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」にて描かれています。
隙を見て宣伝をぶっこんでしまい、申し訳ありません。
というわけで金子、3.5期の原案をやらせてもらいました。
「AXZ」への導入やリンクするネタなんかも仕込まれていますので、遊んでいただけると嬉しいです。

話を戻しますと「AXZ」本編は、束の間の日常というか学生生活というか、
響と未来のだらっとした夏の終わりのワンシーンからはじまっています。

――さすがに今回は、アバンでスペースシャトルの救出はしない?

金子 残念。それは「GX」なので、さすがにありません。

個人的には、4期まで続いたシリーズのはじまりが、 気だるい昼下がりというのもなかなかの冒険だと思っていますし、 何より響的に、夏休みの宿題がてんで片付いていないという、 パンチ一発で解決できない切羽詰った状況からなので、また違った緊張感があると思います。
とはいえ30分番組なので、ほどなくして荒事の出番になるわけですけれど。

あくまでも個人の見解であり、監督をはじめとする他のスタッフの認識とは違うかもしれないと前置きますが、 「AXZ」の1話は「0話」というか、まるまる30分がアバンのつもりで作っています。
なので、2話からが本編です。いや、もしかすると3話からかもしれません。

――そこに何か「AXZ」ならではの仕掛けが施されているのでしょうか?

金子 むしろ「AXZ」の1話と2話は、 金子がやりたかった事がただ詰まっているだけなので、仕掛け等は考えていません。
ですのでファンの皆さんがきっと期待しているに違いない、シリーズ伝統のライブシーンもありません。

――ライブシーンをやらない!?

金子 すみません。楽しみに待ってくれていた皆さん、本当にごめんなさい。

――驚きました。理由を聞かせていただけますか?

金子 昨今、音楽シーンを採用しているアニメが増えてきていると聞きましたので、 だったらシンフォギアでやる必要はあまりないかな、と。
それよりも、「歌いながら戦うアニメ」という他にない「らしさ」や もっとこう「とんちんかん」な部分をしっかり伸ばすべきではないかと考えて、 AXZ開始の最初期に自分から提案させていただきました。ですので悪いのは金子になります。

正直、偉い人たちから怒られるのを覚悟しての提案でしたが、
自分が思ってた以上にすんなりと了承してくれたので良かったです。

――すんなりと了承というのに、こちらが戸惑っているくらいです。

金子 ずっと以前の話になりますが、
こう見えてシンフォギアってキャラソンを売るアニメじゃないと聞いたことがあります。

よくあるビジネスモデルですが、期と期の合間、 本編を放送してない時に新しいイメージソングとかキャラソンアルバムとか出すことは珍しくないのですが、 プロデューサーの森井さんが「シンフォギアはキャラソンを売るアニメではないので、そういうのはしない」と言い切ってました。
もちろんキャラソンはリリースしますし、作品構成上必要不可欠な要素ではありますが、 物語や内容にひもづかない楽曲を安易に売るつもりはないし、ましてやそれらを主軸に据える事はしないと。

――たしかにそう言われれば、これまでキャラソンだけの展開というのはないですね。意外でした。

金子 プロデューサーの森井さんをはじめ、 本当の意味で作品を大切に考えてくれているスタッフは、 そういうのはシンフォギアにとって決していい結果にならないと長い目で判断してくれています。

なので、今回のライブシーン無しについても、その理由をしっかりと聞いてくれましたし、 AXZ1話のシナリオを読んでくれた上で了解してくれました。

シンフォギアという作品は、 他のどのタイトルよりもファンの愛情に支えられているのですが、 負けずスタッフの理解にも支えられているので、こうして今日まで続いているのではないかと思います。
ありがたいですし、個人的には自慢のひとつです。

――他にもまだ、驚くようなニュースはあるのでしょうか?

金子 放映前の段階なので、あけすけに語ることはできませんが、 ライブシーンのオミットのように、 これまでのお約束やパターンをズラしているところはあるかもしれません。

誤解してほしくないのは、お約束やパターンを外すのではなく、狙いはあくまでも「ズラす」。
ちょっとだけ変える事に心を砕いています。そのサジ加減はとても難しいのですが。

――現在公開されているイラストを見る限り、装者たちが身にまとっているシンフォギアのデザインに変化が見られません。これもお約束やパターンをズラしているところでしょうか?

金子 そうといえばそうかもしれませんが……。
物語が「GX」の魔法少女事変から一ヶ月程度しか時間経過していないからというのが本当の理由です。つまんなくてすみません。

ズラすズラさないの基準は、物語上の必然性によるところが大きいので、一概には言えません。
なので、ライブシーンは今回封印となりますが、必然性があればまたひょっこり再開するかもしれません。
現場のスタッフは大変な作業だと思いますが、金子自身、ライブシーンは大好きですので見たいというのが本音です。

――音楽面についてお聞かせください。

金子 装者たちが唄うキャラソンは、もちろんパワーアップしています!
……しているのですが、歌の魅力は、金子の語彙ではなかなかうまく伝えられないので、 機会がありましたらぜひとも聴いてほしいです。

音楽プロデューサーである上松さんの指揮のもと、 Elements Gardenの作家さんたちがすごい曲をたくさん書いてくれています。

今回も各キャラの担当作家さんをシャッフルさせていますので、 新たな魅力を存分に引き出せているというか、シリーズ第4期にもなるのにまったく飽きが来ません。

このタイミングなのではっきり言えなくて申し訳ありませんが、 戦闘曲だけでなく、カップリング曲もバラエティに富んでいて、シンフォギアという作品に厚みを作ってくれています。

ちょっと笑ってしまったのが、 プロデューサーの森井さんからのオーダーに「もっと名曲感出して!」というのがあって、 そんなオーダーの出し方でいいんだ!? と驚いたことがあります。
それでもしっかり応えて、文字通りの名曲が仕上がってくるのはさすがだなあと。

編曲でがらりと様相を進化させる曲もあったりするので、音楽家たちの仕事は間近で見てて感心する事ばかりです。

あとはやっぱり、アフレコ現場で歌って芝居をするキャストの方々が本当にすごいです! 回を重ねるごとにパワーアップして、毎度の現場がちょっとしたシンフォギアライブ状態になっています。

キャストの方々には相変わらず大変な負担を強いているのですが、さすがの面々はそれらを軽く飛び越えてきます。
きっと見えないところで努力をしているのではないかと想像するのですが、 現場でそういう部分は少しも見せず、堂々と歌いこなすところにプロフェッショナルのカッコ良さを感じています。

あ、キャラソンのジャケットイラストも、すごくおしゃれでカッコいいです。
様子のおかしいのが揃ってるシンフォギア装者たちですが、しゃべらなければみんなカッコ可愛くてびっくりしました。

毒にも薬にもならない機密漏洩ですが、「AXZ」は1話で装者6人の歌声を聴けます。
出し惜しみをしないのがスタッフのスタンスです。

現在、序盤数話のダビング作業を終えているのですが、 一期の頃の懐かしいBGMも頻繁に使われていて何だか嬉しくなりました。
シリーズを重ねるというのは、こういう楽しみもあるんだなと思いました。

――難しいと思いますが、可能な限りストーリーの方もお聞かせください。

金子 戦う相手は、今回も錬金術師になります。錬金術師の組織というのが正しいですね。
「GX」にて戦ったキャロルの背後組織になる「パヴァリア光明結社」という団体様が登場します。
シンフォギア世界の歴史の裏に暗躍してきた秘密組織です。
すでに、統制局長であるアダム・ヴァイスハウプトの名前だけは披露していますが、 今回はパヴァリア光明結社の幹部クラスたちがある目的のために日本に上陸してきます。

「完全」を希求するのが錬金術師の行動原理と設定しているのですが、 幹部のひとりであるサンジェルマンは、世界の歪な支配構造を正す事を「完全」と定め、 そのために多くの人の命を害し、結果、シンフォギア装者たちと敵対します。

そして今回、敵は錬金術師らしく金を作ります。
「GX」に登場したキャロルをはじめ、創作物に登場する錬金術師って意外なくらい金を作ってくれないので、 ドカンと景気よく金を作ってもらいました。

あと、現段階で言えるようなストーリーって、他に何があるのだろう(笑)?
自分のように実際に書いている人間だと逆に言いづらいところがあるので、 上松さんあたりに聞いてもらうのがいいかもしれません(笑)。

ああ、ストーリーと言えば、今回の「AXZ」は理由があって、シナリオをひとりで書いていません。

――これまではおひとりで書かれていたのでしょうか。

金子 クレジット上は(笑)。第一期はひとりと言えるかもしれませんが、 「G」以降は会議の場にて監督をはじめとするスタッフみんなと一緒に考えてきたので、 今は「シンフォギアは俺が書いた」などと主張をするのはおこがましい気がします。

コンテやカッティング、アフレコ現場でも変更や追加はありますからね。

――シナリオをおひとりで書かれていない理由を聞かせてください。

金子 実は昨年の夏前に倒れちゃいました。
最終話までのプロットと2話までを書き終え、3話のAパートを書いてたあたりかな?
具合が悪くて動けなくなり、そのまま手術と入院となってしまいました。
でも、年の瀬には職場復帰して、今はもうすっかり元気ですのでご心配なく。

――これは書いても大丈夫な情報なのでしょうか。

金子 ストーリーのネタバレより全然大丈夫ではないでしょうか(笑)。

もちろん自慢げに話すことでもありませんが、 いずれスタッフクレジットに自分以外のライターさんのお名前が表記されるでしょうし、 必要以上に伏せておくことではないと考えます。
何より自分的には苦手なインタビューの紙幅が稼げるネタが見つかってホッとしています(笑)。

そんなこんなで執筆途中に倒れてしまったのですが、 すでに進行しているプロジェクトを止めるわけにはいかないという事で、 今回の「AXZ」のシナリオは、ライティングチームによる分業作業になっています。

先ほども言いましたが、 シンフォギアという物語は、以前より監督やプロデューサー陣との協議で作られていますし、 そうしたスタッフたちはこれまでと顔ぶれが変わらずの続投になっていますので安心してください。

今回参加のライターさんたちも素晴らしいのですが、 プロデューサー陣からの要請と、ライターさんたちの了解を得たうえで、 金子は不在の間の成果物に1文字単位で目を通させていただいてます。

金子が以前に携わっていたゲームタイトルの話になるのですが、 内容の良し悪しではなく、ライターが変わることによる空気感の相違が これまで作品を支えてくれたファンの方々に不義理となると伝え聞き、理解していますので、 3話以降、とくに5話からのシナリオは、責任をもって大きくリライトさせていただいています。

ですので、雰囲気が変わったとは、 パーツ・パー・トリリオンレベルで感じられないはずと断言します。
むしろ違いを判別できる人がいれば、嘘つきかホンマモンの類だと思われます。

――最後にファンの方々にメッセージをお願いします。

金子 大きなネタは、ひとつ前に全部やってしまいました。時間を巻き戻したいです。

とにもかくにも、シンフォギアがお茶の間に帰ってきます。
そして金子も帰ってきました。過酷なシンフォギア現場に。

数か月間病気に伏せっていたのではなく、数か月間英気を養ってきたつもりですので、 今度の「AXZ」も、ぜひ楽しんでいただけれたらと思います。

あと、思わぬ形で病気自慢してしまい申し訳ありません。
気づかわれるのは苦手なので、これまでと変わらずに扱ってもらえると幸いです。
よろしくお願いいたします。