Specialスペシャル

戦姫絶唱シンフォギアAXZ スペシャルリレー対談07

『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』のキャスト&スタッフ陣によるリレー対談を本ウェブサイト限定で公開!

最終回となる今回は、原作者の上松 範康さんと金子 彰史さんにお話を伺います。『AXZ』の物語と音楽はどのようにして生まれ、どのように第5期へと繋がっていくのか。今だから話せる裏話満載でお届けします!

重なる想いが、世界を紡ぐ!

――今シリーズの『AXZ』というタイトルですが、こちらは金子さんが考えられたのでしょうか?

金子 こちらで提案をさせていただいて、話し合いの中で決まりました。物語の大きな流れにある「賢者の石」をフィーチャーしたいと考えていたんですが、さすがに『戦姫絶唱シンフォギア 賢者の石』というわけにはいかず(笑)。ただ、賢者の石には「一にして全」という意味もあり、つまり「AtoZ」であるわけです。それを「A カケル Z」に再構築したのが「AXZ」です。同時に、読みを「axis(アクシズ)」とすると「軸」として捉えられるので、第5期に繋ぐ軸であり、劇中のテーマでもある「正義の選択」の軸線としての意味合いを持たせました。

――「正義の選択」というテーマを描こうと思った理由を聞かせていただけますか?

金子 『シンフォギア』シリーズの敵にはわかりやすい悪が存在せず、敵とはいえ一つの主人公サイドであり、そこには主義や正義があります。これまでは正義と正義の激突といった対立構造がありましたが、今回は激突を描きつつも、それ以外の描き方が必要と考え、「正義とは何か?」というところで敵も味方も「選択していく」という物語にしています。直接的ではない激突を描ければなと考えていたと同時に、今後に控える立花 響の物語を描くための準備としても使わせてもらいました。

――上松さんは『AXZ』のシナリオをご覧になり、音楽的にはどのようなアプローチを考えたのでしょうか?

上松 金子さんとは長年の付き合いで相棒の領域なので、いいものが上がってくるのはわかっていましたし、あとはその物語にどれだけ寄り添い、魅力を増幅できるかを考えました。その上で、『シンフォギア』はライブもあるので、ライブとして盛り上がれる曲にしたいなと。きっと皆さん、物語を見て、音楽を聴くと、今度はライブで何を見せてくれるのか期待されると思うんです。物語にも合って、皆さんが入り込める音楽にしたいとは常に考えていました。

――『AXZ』の新キャラクターであるパヴァリア光明結社の三人については、どのように描こうと考えられたのでしょうか?

金子 サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティの三人は、そこだけで完結する、完成された小さな世界であることを心掛けています。一元的に捉えるならば、絆の深い仲間同士。ある意味において正義の一つの完成形です。だからこそ、彼女たちには設定的に不老長命であったり、誰かの命を犠牲にして力を得ていたりという、完成した者が漂わせている「死」の要素を盛り込んでいます。響たちが「命を燃やす」ことで問題を解決しようとする者たちであるのに対し、サンジェルマンたちは「死を灯す」ことで未来に繋げようとしている。両者とも目指すところは一緒だけれど、違った位置づけになればいいなと考えていました。これは上松さんが三人の曲につけた「死灯」という言葉の影響も大きいですね。

上松 金子さんのアイデアの中に死というテーマが見えたので、死を前向きに捉えられるような言葉を考えたんです。サンジェルマンたちは、自分の死によって何かを成し遂げようとしているのではないか。むしろ、そういう者たちであってほしいという思いも正直ありました。ちょっと矛盾しますが、「死を灯す」という言葉は死を意味しながらも、何かを灯す、何かを残すというすごくいい言葉なのではないかなと思って、金子さんに提案させてもらいました。

――『死灯 -エイヴィヒカイト-』はどのようなことを念頭に置きながら制作されたのでしょうか?

上松 プロットの段階で本編で二回歌うことは決まっていました。最初の第1話では、三人のミステリアスさと歌唱力のすごさを見せようと思い、アカペラという形にしたんです。第12話は同じメロディーではあるものの、歌詞をドイツ語から日本語に変え、死に対する決意を綴ろうと思いました。もちろんそれで終わりの曲ではなく、三人には歌いながら死に向かっていくというヒロイックなところがあるので、戦闘曲としてヒロイックな部分と錬金術師としての「古(いにしえ)」のイメージも大切にしています。この曲に限らず、『AXZ』の曲は最初からこうしたいという感覚に頼る作り方ではなく、シナリオやライブのことを考えながらロジカルに作っていくパターンが多かったですね。

金子 今までもドラマチックなメロディーは多かったんですが、特に今回は物語性の強い曲で盛り上げていただいて、とても助けられました。

――パヴァリア光明結社の三人にはモチーフがあると伺いましたが。

金子 そうですね。キャラクターを考えるときはそれこそ身近な人だったり、テレビで見た人だったりをモチーフにすることがあります。今回の三人はそれぞれヘビーなお話を背負っていますが、あえて芸人さんの空気感や「こういうときにはこう返すよね」という距離感を意識しました。

上松 え、モチーフにしたのは誰なんですか?

金子 東京03です。

上松 あ~、なるほど!

金子 装者も自分のまわりにいるような人がモチーフになってます。もちろん、実際彼女たちのような人はいませんから、モチーフにした人が持つ要素の数パーセントをデフォルメして拡大解釈しているだけです。

――今回は装者チームも新たな組み合わせでユニゾン曲を歌いました。この組み合わせとストーリーはどのような発想から生まれたのでしょうか?

金子 物語という部分でいえば、「不協和の許容」ですね。今回は敵が味方になるのではなく、あくまでも敵は敵として共闘するという物語なので、今までになかったカップリングでユニゾンさせてみるのも、遠回しに『AXZ』の物語になるのではないかという狙いがありました。ただ、この組み合わせで歌を聴いてみたいという自分自身の好奇心も大きかったです。

上松 ユニゾン曲をどんなテーマで統一するか、真新しさを感じてもらうにはどうするかを考えたときに、まだ聖詠のメロディーをしっかり曲に落とし込んでいなかったことに気付いたんです。それで、聖詠の要素でイントロを始め、いろんなところに出てくるというギミックを入れました。たとえば、翼と調の『風月ノ疾双』は、Bメロのオケで二人の聖詠を使っています。それぞれの聖詠が反応し合うことで、ギアが進化し形状が変わるということを音楽で表現できたらと考え、作家みんなで協力しながらそのルールを徹底するようにしました。

金子 仕掛けた側がびっくりするような、想像のさらに上をいく名曲がきたので嬉しかったですね。いたずらを仕掛けたつもりが、真っ正面からがつんと返された感覚でした。

上松 我々、作家陣もワクワクしながら作りましたよ。第4期まで来ていますし、何か新鮮なことがしたいと考えていたところに、こういう組み合わせできたかという驚きもあって。金子さんが新しいおもちゃを与えてくれたような感覚でしたね(笑)。

――第6話のエンディングと最終話で登場した『アクシアの風』は、どのようにして生まれたのでしょうか?

上松 こちらは音楽ディレクターの吹田(亜沙美)さんが提案してくださったものです。『シンフォギア』への想いを熱く語ってくださって、企画の最初から携わっているスタッフでもあるので、その想いは叶えたいと燃える部分もありました(笑)。でも、本当に聖詠と絶唱、そして戦闘曲を繋げるというアイデアがあってよかったなと思います。

金子 『AXZ』の第6話は、物語として一区切りつく話数です。第6話でLiNKERを巡るお話が一段落し、そこからパヴァリア光明結社との本格的な戦いに繋がっていくという大きな山場でもあるので、特殊エンディング的なものにしたいと考えていました。そこで、吹田さんに相談したところいろいろなアイデアを出してくださって。いつも吹田さんには助けられていますが、今回は特に物語として見える形で助けていただきました。

上松 もともと聖詠の曲って一つの曲だったんです。『始まりの歌(バベル)』では聖詠を日本語に訳していましたが、今回は物語の展開から、最初の形でフルで聴いてもらうべきなのではないかということを吹田さんが提案してくださって。『始まりの歌(バベル)』の意味をより深めることにもなる素晴らしいコンセプトだと思いました。『始まりの歌(バベル)』でもかなりの「最終形態感」がありましたけど、こういった繋ぎ方をすることでまた新しい終わり方と熱さをもう一度見せらるんだって。「繋ぐ」という形で締められたのは実に『シンフォギア』らしかったなと思います。ここまでやってしまうと、第5期はどうするんだという不安もありますけどね……(笑)。

――それぞれ『AXZ』で印象に残っているシーンを挙げていただけますか?

金子 好きにやらせていただいたという意味では第1、2話ですね。全編にわたってハリウッド感満載でやらせていただきました。自分はハリウッド映画という産湯に浸かってきましたし、その要素をたっぷり詰め込むことができたのは、ほかのスタッフの皆さんのおかげです。

上松 僕も第1、2話です。「『シンフォギア』とは何か?」が一目でわかる話数ですよね。音楽と映像が融合したアニメというものを体現した話数で、『シンフォギア』ってどういうものと聞かれたらまずはこの話数を見てほしいと言います。もう一つは……アダムが黄金錬成して裸になるところですね(笑)。あの絶望感もさることながら、裸も相まってインパクトがすごかったです。

金子 あと、もう一つ挙げるとすれば、ステファン全般ですね。男性キャラクターの活躍を前面に出しづらい作品の中で(笑)、シンフォギア装者ではないキャラクターが実はとても男気のある奴だったという描き方ができて、いいアクセントになったのではないかなと思います。

――『AXZ』におけるお二人の立ち位置で、これまでのシリーズと変わったなと思うところはありますか?

金子 今回は上松さんに曲のタイトルをいっぱいつけてもらいましたね。

上松 いつもタイトルは金子さんにお任せしているので、あまりつけている自覚がなかったのですが、結構つけてましたね。

金子 たとえば『激唱インフィニティ』は上松さんですよね。

上松 そうですね! それに『旋律ソロリティ』で返してくれたのが金子さんでした。

金子 曲をお願いするときは、曲のイメージや物語、キャラクターの心情をまとめて出すんですが、上松さんが歌詞を書いてくださり、自分が最後にタイトルをつけるという流れがよくあるパターンだったんです。ただ、今回は上松さんのアイデアが多くて、たとえば装者のユニゾン曲のタイトルは全部上松さんでしたね。ただ、『花咲く勇気』(『負けない愛が拳(ここ)にある』のカップリング曲)だけは、曲ができる前にタイトルはこれでお願いしますと提案しました。

上松 第5期は金子さんのほうで先に全部曲名を決めていただいていいと思いますよ。

金子 先に全部決めるのはちょっと大変かな(笑)。

上松 そのスタイルだとすごく楽しいんですよ。物語を書く人の「こうしたい」という想いを凝縮したタイトルがわかるわけじゃないですか。そうすると歌詞もぶれないんです。曲名があると、すごいパワーを発揮しますよ、わたくし。

金子 オーダーは承りました(笑)。

――そして気になる第5期への展望を伺えますでしょうか? 『AXZ』最終話の最後に映し出された未来がなんとも不穏な展開を想起させ、気になっている方も多いと思いますが……。

金子 今回は上松さんがやってほしいと言っていた「次もあるんだよ」という終わり方を採用しました。第5期があるということで、やっとできたことですね。

上松 今回、特にワクワクしたのは、そういう理由があったからなんですね。

金子 自分の哲学なんですが、はっきりと終わらせることが一番大事だと考えているんです。だから、『GX』までは、伏線や想像の余地を残しつつも、すぱっと「これでおしまい!」という形で終わらせています。ただ、今回はむしろ次に繋がる終わり方にする必要があったので、このような形になりました。「不穏な展開」とおっしゃるとおり、皆さんいろいろ思われるかもしれませんが、こちらとしては「いつもの『シンフォギア』シリーズだよ」というふうに考えています。過酷でどうしようもない状況の中、可能な限りのハッピーエンドを毟り取ろうと、装者たちともども奮闘中ですので、気長にお待ちいただければと思います。

上松 僕は金子さんとは逆で、まだまだ終わらないよということを見せるのが好きなんです。それは、どうなっていくんだろうと自分が想像するのが好きだからかもしれないですね。『シンフォギア』もそうできたらとずっと思っていて、それは各話で次の話数への引きとして採用していただきました。ただ、実際こういった終わり方になり、第5期がどうなるのか今現在はまったくわからないので、僕としても楽しみですね。Elements Gardenとしてはまたしっかり褌締めていこうという心意気です!

――では最後に、恒例の「あいうえお作文」があるのですが……あらかじめ金子さんからは「ズンドコ節こそシンフォギア」という案をいただきました。

上松 え、僕もズンドコ節がいいって、さっき話していたんですよ! 音楽だし、ズンドコ節でしょって。

金子 これ、一番美しいオチじゃない?

上松 ちょっと気持ち悪いですけどね(笑)。

【SPECIAL CORNER】

●シンフォギアを一言で表してください!

金子:不協和(の許容)

上松:響(協和)

●みんなの力を一つに束ねて「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」であいうえお作文を作ろう!

上松&金子 :ズンドコ節こそシンフォギア

これにてあいうえお作文完成!!果たして一つに束ねられた…のでしょうか…!?

<完成版>

せん:
洗濯物が
き:
キラキラと
ぜっ:
絶好調で
しょう:
しょうもない
しん:
真実の
ふぉ:
フォカッチャを
ぎ:
ギリギリまで
あ:
愛し続ける
あ:
あの日のように
く:
屈託のない笑顔で
し:
しワケし続ける
ず:
ズンドコ節こそシンフォギア

全7回に及ぶリレー対談はこれにて終了です!第5期の放送もお楽しみに!!